毎年、盆暮れの時期には、親戚一同があなたの家に集まるのが恒例となっている。従兄弟のケイコも毎年のようにやってくる。
 勝ち気で活発なケイコだが、不活発を絵に描いたようなあなたとは不思議と気が合って、お兄ちゃん、お兄ちゃんとなついてくれる。
 そんなケイコが、今年の夏、急に大人っぽくなっていた。ほっそりとしていた身体が丸みをおび始め、キャミソールの胸元は、あなたの手のひらにちょうど収まるほど膨らんでいる。
 妹のようだったケイコに<女>を感じとったあなたは、妙な背徳感と戸惑いを覚えていた。どう接して良いかわからず、よそよそしい態度を取ってしまう。
「もう……どうしたのよ、お兄ちゃん」
「……ん?」
「何かヘンだよ」
「そんなこと、ないよ」
 ソファに寝そべってテレビを観ていたあなたの前に、ケイコが立ちはだかった。
「どけよ、見えないだろ」
「えへへ……このスカート、可愛いでしょ?」
 なるべく興味のなさそうな顔で、チラリと目をやる。
 超ミニのスカート。すらりと伸びた、小麦色に焼けた太ももが眩しい。思わず、じっと見入ってしまう。
「……お兄ちゃん、ケイコのぱんつ、見たい?」
「バカ……お前のお子様パンツなんて、見たかないよ」
「お子様パンツなんて、もう履いてないもン」
「わかった、わかった」
「ウソじゃないよ、ホラ……」
 ケイコがおもむろにスカートを捲った。
「わ、ちょ……おま、何してんだよ」
 あなたは、慌てて目をそらした。
「アハハ、びっくりした? よく見てよ、お兄ちゃん。これ、キュロットスカートだよ」
「え……」
 見れば、確かにその通りである。ケイコは尚もスカートをまくり上げながら、腰をくねくねと揺らしている。
「これ、結構高かったんだよね。涼しいし、可愛いし、足開いてもぱんつ見えないし、イイでしょ?」
 ケイコは無邪気に言うが、あなたは内心ドキドキしていた。スカートの中身が問題なのではない。スカートを自らまくりあげているという、その行為そのものが、エロチックなのだ。
 そうした男の心の動きを、ケイコは未だわかっていない。大人の身体と子供の心――わずかな間だけ存在する、目の眩むような輝き。その輝きに理性が浸食されつつあるのを、あなたは感じていた。


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